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年次大会報告
令和元年度日本写真芸術学会年次大会報告

 令和元年度日本写真芸術学会年次大会が、6月8日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。10時より通常総会、11時から研究発表会、18時から学会賞授与式、18時30分から懇親会が開催されました。
 先ず冒頭での実行委員長の開会の辞に続き、高橋会長が挨拶を行い、会勢や財政の現状を鑑み、学会としての活動活性化とその質の向上の必要性、新たな研究会の発足や学会誌のリニューアル、経費の削減による財政状況改善への取り組みなどを述べました。
 続いて通常総会では、高橋会長が議長をつとめ、高橋議長より上田耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項では、まず佐藤英裕理事より本年度の役員改選選挙の結果として、理事12名、評議員4名、幹事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は無事に終了しました。
 研究発表会は、上田耕一郎理事を座長にして調査口述2件、田中仁理事を座長にして調査口述2件、佐藤英裕理事を座長にして論文口述2件、吉田成理事を座長にして論文口述3件、西垣仁美理事を座長にして論文口述2件の計11件の発表がありました。発表の題目・発表者(所属)及び概要は下記の通りです。
発表1(調査口述)「戦前のニュース写真発見」石黒敬章(ゆうもあくらぶ)
存外少ない戦前のニュース写真を、最近収集した中から、こんなニュースがあったのかと思われる明るいニュースを選んで紹介がなされました。
発表2(調査口述)「明治三陸津波をいち早く撮った末崎仁平」沼田清(共同通信社)
 1896年6月の明治三陸津波の際に、岩手県鍬ヶ崎町(現宮古市鍬ヶ崎)の惨状をいち早く記録した地元の写真師・末崎仁平について、作品とその発掘の経緯を紹介するとともに、最近判明した出自や、宮内庁への写真献納経過が報告がなされました。
発表3(調査口述)「風景写真競技会の評価観点についての考察」水島章広(産業能率大学)
 トーナメント競技の要素を入れた風景写真評価の楽しみ方を実践する中で課題であった、ジャッジ育成のために必要な作品評価の基準づくりについての調査と考察について発表がなされました。
発表4(調査口述)「アクティブラーニングによる初心者向け写真撮影の授業の実践について」丸山松彦(玉川大学)
 教育機関における限られた時間のなかで、写真の撮影技術を取り扱う際の効果的な学習方法と授業運営について、アクティブ・ラーニングによる授業の実践について解説がなされました。
発表5(論文口述)「〈インスタグラミズム〉の写真芸術学的考察」石橋賢明(東京工芸大学大学院)
 既存の写真論とは異なるマノヴィッチ独自のアプローチによって明らかにされた美学である〈インスタグラミズム〉の概念について、その著書『インスタグラムと現代写真文化』での論述を中心に、写真芸術学的見地からの検討が報告がなされました。
発表6(論文口述)「2次元フーリエ変換による写真の客観的評価に関する研究」伊藤雅浩,福川芳郎(ブリッツ・インターナショナル)
 「良い写真」「悪い写真」という感覚的で曖昧な表現で語られることが多い写真の評価について、2次元フーリエ変換による数値的な客観評価方法の確立を目的とした研究が報告がなされました。
発表7(論文口述)「沖縄の〈写真館文化〉の特色について」李京彦(大阪芸術大学大学院)
 日本本土の営業写真館が創り出した〈写真館文化〉とは異なる特色を持つ沖縄の営業写真館の歴史と、時代・地域社会の特性などから現れる特色と変遷について報告がなされました。
発表8(論文口述)「ピーター・ヘンリー・エマーソンと自然主義写真のゆくえ ─日本における 受容と展開に関する考察」打林俊(日本大学)
 我が国のピクトリアリズムの成立を考える上で重要なピーター・ヘンリー・エマーソンの写真史における位置づけと、日本写真史における受容を中心に考察が報告がなされました。
発表9(論文口述)「島津斉彬が取り組んだダゲレオタイプとカロタイプ─異なる写真技術に取り組んだ背景に対する―考察―」安藤千穂子(京都工芸繊維大学)
 被写体との関係性を軸に、ダゲレオタイプとカロタイプという二つの写真技術に島津斉彬が取り組んだ背景について報告がなされました。
発表10(論文口述)「文化財としての写真原板の活用」三井圭司(東京都写真美術館),三木麻里(日本大学)
 写真師・堀内信重が撮影したコロディオン湿板方式原板から印画した鶏卵紙とデジタル・データとの差違について考察された結果が報告がなされました。
発表11(論文口述)「植田正治カラー作品研究─原板の保存とデジタルアーカイブ─」田中仁(東京工芸大学)
 日本を代表する写真家の一人といえる植田正治の生家に残されている未整理のカラー作品の保存とデジタルアーカイブを行った結果が報告がなされました。
 学会賞授与式では、本年度は名誉賞に原直久氏、芸術賞に原直久氏、功績賞に永坂嘉光氏が受賞されました。授賞理由は以下の通りです。
 原直久氏は本学会発足に際し設立委員として参加、初年度より理事として永く学会の発展に寄与してこられました。とくに平成14年度から15年度は副会長として、さらに平成16年度から26年度まで10年の長きにわたり会長をつとめられ、この間3回にわたる九州シンポジウムの開催等をはじめとして学会の活性化と発展に尽力されました。また会長退任後も理事として学会の運営に携わるとともに写真プリント研究会での講演等継続して学会の活性化に寄与されました。以上のような本学会発展に対する顕著かつ多大な貢献に対して名誉賞を授与致しました。
 また、原直久氏は1973年以来、8×10インチ大判カメラを用いて作品制作を継続し、国内外で作品を発表する作家活動は40年以上にわたります。平成30年にはその集大成といえる全貌が見える写真展「原直久 時の遺産」展が日本大学芸術学部芸術資料館で、および千葉の海岸、九十九里浜等の初期作品展がフォト・ギャラリー・インターナショナルにおいて開催されました。さらに、東京都写真美術館の企画展にも「イタリア山岳丘上都市」のシリーズ作品が選出されています。以上のような写真展と長年にわたる作品活動に対して芸術賞を授与いたしました。
 永坂嘉光氏は長年にわたり、理事として関西を中心に学会活動の牽引に勤めてこられました。とくに多くの関西シンポジウムの企画、運営に顕著な業績を残し、本学会発展に寄与にしたことに対して功績賞を授与いたしました。
 年次大会の最後には吉田成副会長が閉会の挨拶を行い、その後場所を東京工芸大学食堂プレイスへ移して懇親会が催されました。上田耕一郎理事の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
 今年度の学会活動としては、昨年度に引き続き写真プリント研究会の開催と関西支部の写真研究会とシンポジウムが予定されております。また、夏期に写真史研究会をはじめて開催いたします。ぜひ積極的なご参加をお待ち申しあげます。また、本年度は学会誌論文編を2巻発行の予定です。論文投稿が活性化し充実したものとなりますようお願いいたします。そして次年度の年次大会もより多くの皆さまにご参加いただけますことを願っております。

(報告:秋元貴美子理事、写真:高田有輝)

総会の様子
研究発表会
学会賞授与式
懇親会

関西支部第2回シンポジウム報告

日本写真芸術学会 関西支部 第2回シンポジウム「写真のアーカイブズについて2」
日  時  2018年12月1日(土)午後3時〜5時30分
於     ビジュアルアーツ専門学校 VD1校舎7B教室
パネラー 京都市立芸術大学芸術資源研究センター 山下晃平氏
     大阪市立中之島美術館 研究主幹  菅谷富夫氏
司  会 吉川直哉理事

 関西支部では昨年の第1回シンポジウムにおいて写真のアーカイブズについて議論を深めました。その後の研究会ではアーカイブズの対象となるべき1970年代、80年代における写真活動について、そこに主体的に関わられた方よりお話を聞かせていただき、その活動を検証しました。そして第2回のシンポジウムでは、再びアーカイブズについての理解を深めると言う観点から、アーカイブズを実践研究されている研究者の方に御登壇いただき議論を深めました。

 当日は会員、非会員合わせて30名ほどが出席し、吉川理事の司会で午後3時より開式。関西支部代表村中理事、日本写真芸術学会高橋会長より挨拶の後、本日のパネリストである京都市立芸術大学芸術資源研究センターの山下晃平氏が「収集の時代からリ・サーチ(re・search)の時代へ」というテーマで発表されました。
 山下氏が京都市立芸術大学芸術資源研究センターにてプロジェクトリーダーを務めておられる「井上隆雄写真資料に基づいたアーカイブの実践研究」より、「原秩序保存の原則」に基づいた資料の保存、管理の現状。そして資料の利活用、情報発信など、単なる収集に終わらない活動の現状をお話しいただきました。また同時並行的に取り組まれている美術家森村泰昌氏に関する文献資料のアーカイブについても言及され、こちらでも収集とアーカイブズの利活用の現状についてお話を聞くことが出来ました。他にも隣接領域の動向など多くの事例を挙げてお話しいただきました。そして分類法はデータベース型ではなく階層型の分類が有効ではないか、また収集するだけでなく、再調査(re・search)し、外側に向けて発信していく場を作っていくことが重要と発表を締めくくられました。
 15分の休憩の後、本学会会員でもある大阪市立中之島美術館研究主幹菅谷富夫氏とのパネルディスカッションとなり、アーカイブズにおける著作権問題、「写真資料」と言う言葉の曖昧さ、未発表作品かボツ作品かの判断基準、どこで作家性を担保するのか、などについて意見交換し議論を深めました。最後に質疑応答の時間を設け参加者よりも活発な質問があり、午後5時30分に終了しました。

(報告:村中 修 理事)

関西支部シンポジウム
関西シンポジウムの様子

研究会案内
日本写真芸術学会 第1回写真史研究会

 日本写真芸術学会が3本の柱として掲げている写真の表現、歴史、教育に関する会員の研究成果は、これまで年次大会の研究発表会や学会誌において発表されてきました。今後はさらにそれぞれの分野における研究の活性化と深化を目指して研究会活動を進めて行きたいと考えています。
 このような主旨により、この度、下記のように第1回写真史研究会を開催することとしました。すでに会員の皆様には別紙にてご案内したところですが、今後ともご関心のある多くの方々にこのような研究会にご参加頂きたく、お願い申し上げます。

日 時:令和元年8月3日(土) 15:00〜17:30
会 場:東京都写真美術館 学習室  参加費:無料(定員24名・先着順)
ゲスト:ルーク・ガートラン博士(セント・アンドリュース大学准教授)
講 演:「日本における経歴─ライムント・フォン・シュティルフリートと初期横浜写真」
(逐次通訳付講演約90分、その後質疑応答・ディスカッション)

写真プリント研究会報告

「写真表現におけるプリントの意義と魅力」
日時:2018 年10 月13 日(土)15:00 〜17:00
会場:日本大学芸術学部 江古田キャンパス


創立25周年記念イベントとして開催した「写真プリントセミナー〜新しいプリント時代の到来のために〜」を継続するために「写真プリント研究会」を昨年行いました。それに続く研究会を平成30年10月13日(土)午後3時より日本大学芸術学部江古田キャンパス西棟3階学芸員実習室、303教室で「写真表現におけるプリントの意義と魅力」というタイトルの講演会を本学会元会長で写真家の原直久先生にお願いしました。 この研究会は、日本大学芸術学部芸術資料館および写真ギャラリーで開催中の「原 直久 時の遺産」展(10月9日〜 11月9日)に合わせて企画したものです。
研究会当日は、会員と一般聴講者を合わせて28名の参加がありました。司会進行は、当学会副会長の西垣が務め、作品鑑賞、質疑応答を含め約2時間の研究会となりました。
研究会は、高橋則英会長による挨拶で始まりました。続いて西垣より原先生の略歴を紹介し、講演となりました。
講演内容は、学生時代には広告写真家をめざしていたにもかかわらず、卒業後には大学に残り風景写真を大型カメラで撮影するようになった経緯から始まり、当時愛読していた小説やエッセイなどに触発され、影響され、ヨーロッパを撮影するようになったという被写体との出会いなどについて話されました。そしてパリ、フランス、イタリア山岳都市、スペイン、ヴェネチアなどの撮影秘話を作品や撮影風景の写真を見ながらうかがいました。次に、撮影対象が台湾、韓国、北京、上海へ移った経緯を、ヨーロッパとアジアの世界が共に大きく変化した時代背景を細かに説明され、被写体が変わった理由を説明され、そののち作品と撮影風景、アジア各国で開催された写真展などのエピソードをうかがいました。作品紹介の後は、手作りの引伸機や、プラチナプリントを制作する露光機などのあるご自身の暗室を紹介され、ネガからプラチナプリント用のデジタルインターネガを作るようになった経緯とその制作方法、その利点などを説明されました。
パワーポイントを使用した講演の後は教室を移動し、原先生の解説をうかがいながらオリジナルプリントとデジタルインターネガを直接に鑑賞しました。そこで、原先生が写真家・石元泰博の「桂」のポートフォリオの実物を見ながら、そのプリントを制作した時の秘話をうかがいました。
最後に、今回の写真展会場で、銀塩とプラチナのオリジナルプリント作品についての制作のご苦労や思い出などをうかがいました。この展覧会は写真家生活40年をこえ、作品数約14,000点の全作品の中から選び抜いた166点で2017年に台北の国立歴史博物館で開催された大規模な回顧展「時の遺産」展から更に高橋会長が選出し再構成したものです。
そして吉田成副会長の感想をまじえた挨拶により中締めとなりました。その後も、参加者は自由にオリジナルプリントを鑑賞し、個別に原先生に表現や技術についての質問などをして有意義な時間を過ごしました。全体をとおし、原先生がいかにプリントにこだわり、作品制作を継続してきたかが分かる講演会でした。

写真プリント研究会 写真

(文:研究会担当・副会長 西垣 仁美、写真:穴吹 有希、鳥海 早喜)

関西支部第5回写真研究会報告

「1970年代以降、関西の写真の動向を考え、アーカイブスの方法論を探る:フォトストリートについて」
日時:2018年9 月15 日(土)15:00 〜17:00
会場:京都造形芸術大学 大阪藝術学舎

 去る平成30年9月15日(土)午後3時より、京都造形芸術大学大阪藝術学舎において、日本写真芸術学会関西支部による第5回研究会を開催しました。テーマを「1970年代以降、関西の写真の動向を考え、アーカイブスの方法論を探る:フォトストリートについて」とし、自主ギャラリーや企画展、雑誌の創刊など、様々なアプローチで1970年代から活動を続けておられる「フォトストリート」のメンバーである川口和之氏にご講演いただきました。
 高橋則英会長による開会のあいさつに続き、吉川理事の進行によって川口氏にご登壇いただき、当時の状況について当事者の視点からお話しいただきました。1977年に発足したフォトストリートの活動内容やその活動に至った経緯などを、同時期に国内の様々な場所で繰り広げられていた写真活動とリンクさせながら語っていただき、活動ごとの関連性やそれぞれの立ち位置を俯瞰して考察する良い機会となりました。
 発表後の質疑応答では、現在も継続して行われているフォトストリートの活動から考える将来的な活動のあり方や、1960年代から70年代にかけての大学生における写真、表現活動の変遷などについて意見が交わされ、活発な議論が行われました。
 最後に中山理事より、今後も引き続き、関西における写真文化の継承について、その方法を探る研究活動を続けていくことが報告され、年末にシンポジウムを開催予定であることが発表されました。

関西支部第5回写真研究会報告 写真

(文、写真:中山 博喜 理事)

年次大会報告
平成30年度日本写真芸術学会年次大会報告

平成30年度日本写真芸術学会年次大会が、6月2日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。13時30分より通常総会、14時30分から研究発表会、18時から懇親会が開催されました。
通常総会は、内藤会長が議長をつとめ、内藤議長より佐藤英裕理事が書記に指名されました。
報告事項では、まず秋元貴美子理事より本年度の役員改選選挙の結果として、理事11名、評議員7名、幹事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は無事に終了しました。第6号議案においては、新会長に高橋則英理事が選出され、新副会長に吉田成理事・田中仁理事・西垣仁美理事が高橋新会長より指名されました。
研究発表会は、秋元貴美子理事を座長にして調査口述1件、佐藤英裕理事を座長にして作品口述1件、吉田成理事を座長にして論文口述1件、調査口述1件、高橋則英理事を座長にして論文口述1件の計5件の発表がありました。発表の題目・発表者(所属)及び概要は下記の通りです。

1.調査口述「トーナメント競技の要素を取り入れた写真評価の報告」産業能率大学 水島 章広
趣味としての写真作品の評価を受ける場として、同好会や写真教室などで相互または指導者から評価を受ける機会や、コンテストなどに応募して評価を受ける方法がありますが、これらとは異なる「競技」としての要素を織り込んだ手法を考察し実施したことについての報告がなされました。
2.作品口述「創作写真『女R-T』シリーズ、『女R-U』シリーズの制作過程について」 創作写真家 菅家 令子
創作写真「女R-T」「女R-U」シリーズの制作過程などについて説明がなされました。印画紙の表面にクレパスを塗ったりライターで焼いたりといった、独自の手法で加工を施し、ホッチキスや糸などで貼り付けて立体的な要素も組み込み、最終的に複写をして完成形となるまでの過程が明らかになりました。
3.論文口述「フランス第二帝政期の写真表現に関する考察ー絵画複製写真を中心に」日本学術振興会特別研究員 打林 俊
フランス第二帝政期下の1855年に始まった「フランス写真協会展」の目録を資料として、同時代のフランスの写真表現の動向を検証することが可能と考え、絵画複製写真の出品数の推移に注目し、そこから見出される複製写真の史的意義についての考察が発表されました。
4.調査口述「幕末期日本関係ダゲレオタイプの調査と保存に関する研究─函館市と松前町の2点の保護処置を中心に─」◯日本大学 三木 麻里・東京都写真美術館 山口 孝子・東京国立博物館 荒木 臣紀・日本大学 高橋 則英
幕末に撮影されたダゲレオタイプを次世代が受け継げるように、世代を結ぶ持続可能型保存ネットワークの構築に関する研究を進める中で、「松前藩家老松前勘解由と従者像」と「松前藩士石塚官蔵と従者像」に劣化の進行、ハウジングの誤りが判明し、平成29年度の助成により保護処置を行ったことを中心に報告がなされました。
5.論文口述「ピエール・ロシエのネガコレクションーその概要と考察」東京大学史料編纂所 谷 昭佳
ビクトリア&アルバート博物館(イギリス・ロンドン)における報告者の調査により、新たに存在を確認した幕末の日本の姿を撮影したスイス人写真家ピエール・ロシエのコレクションと考えられるコロジオン湿板ガラスネガの概要について、速報的に報告がなされました。
最後に高橋則英新会長より、写真表現・歴史・教育を三本柱とした学会の使命を踏まえて、今後さらなる会勢拡大、活動の活性化を進めて行く上で、会員の皆様の多大なるご協力を賜りたいという会長就任の挨拶がありました。
年次大会終了後、場所を東京工芸大学食堂プレイスへ移して懇親会が催されました。
田中仁新副会長の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
今年度の学会の活動としては、昨年度に引き続き写真プリント研究会の開催、関西支部の写真研究会、シンポジウムなどが予定されております。また、学会誌も論文編に加えて創作編の発行も計画しております。次回の年次大会もより多くの皆様が参加して下さることを心より願っております。

(文:上田 耕一郎、写真:篠田 優)

写真プリント研究会報告

写真プリント研究会

昨年度、日本写真芸術学会は、学会創立25周年記念イベントとして、「写真プリントセミナー〜新しいプリント時代の到来のために〜」を開催し、好評を博しました。それを受けて、2017年11月25日(土)午後2時より、東京工芸大学中野キャンパス1203教室において、「写真プリント研究会」を開催しました。講演者は、日本写真芸術学会会長で東京工芸大学名誉教授の内藤明先生にお願いしました。
研究会当日は、会員と一般聴講者を合わせて33名の参加者がありました。司会進行は、当学会副会長の吉田が務め、質疑応答を含めて約100分の研究会となりました。
ご講演は、写真像の特性のうち、最も根源的な要素である階調について、その階調再現は濃度によって形成されること、さらにその濃度を考える時、対数で提示する根拠をウェーバー・フェヒナーの法則に触れながら調子再現についての説明からはじまりました。
次に、近年の黒白印画紙での調査ということで、号数による描写の相違について、7種類の印画紙による現物のプリントサンプルが提示されました。さらに、多階調印画紙において階調がフィルターによって変化する仕組み、ご自身が測定された各社多階調フィルターの分光特性における相違の説明もありました。また、作図された特性曲線での各社号数紙での相違や号数紙と多階調印画紙の違いの説明の他、現像時間、現像温度や現像液の希釈による特性の変化、定着液による特性の相違や、ラピッド・セレニウムトーナーを使用した場合の濃度変化や色調等についても特性曲線や分光特性を用いた説明がありました。最後に、引き伸ばし機の光学的な調整や光源等について触れられ、「プリント雑感」という、やや漠然とした講演タイトルから想像した内容からは、良い意味で裏切られるご講演でした。
ご講演が終了してからは、内藤先生ご自身が制作された黒白印画紙プリントによる作品や、各種のプリントサンプルを身近に閲覧させて頂き、講演者を囲んでフリーに質疑応答が行われました。
最後に、本学会の高橋則英副会長に閉会のご挨拶をして頂きました。今回の研究会は、写真プリントの研究の奥深さを改めて感じることができる良い機会となりました。

(文:研究会担当・副会長 吉田 成 写真:理事 上田 耕一郎)


関西支部・第1回シンポジウム報告


去る平成29年9月2日(土)午後5時より、京都造形芸術大学大阪サテライトキャンパスにて、日本写真芸術学会関西支部による第1回シンポジウム「写真のアーカイブスについて」を開催しました。
当日は、会員と一般聴講者合わせて30名ほどの参加がありました。永坂嘉光理事の挨拶に始まり、3名の講師によるご講演の後、吉川直哉理事による司会進行でパネルディスカッションが行われ、約2時間半の会となりました。
最初に、本学会会員で大阪新美術館建設準備室 研究主幹の菅谷富夫氏にご登壇いただき、「美術館におけるコレクションとアーカイブ」についてお話しいただきました。まずは、建設計画が進んでいる大阪新美術館の概要についての解説に始まり、大阪市が所蔵するコレクションやアーカイブを実際に見ながら、“コレクション”と“アーカイブ”との住み分け方についてお話しいただきました。
続いて、高知県立美術館 石元泰博フォトセンター 学芸員の茂木恵美子氏にご登壇いただき、「石元泰博フォトセンター開設の経緯と活動」と題してお話しいただきました。
高知県立美術館では写真家 石元泰博氏の作品(プリント)を約35000点収蔵しており、そのコレクションはプリントだけにとどまらず、15万枚にのぼるネガや関連書籍、そして、石元氏が愛用していた機材にまで及びます。これらのコレクションを包括的に所蔵するに至った経緯についてご解説いただき、多くの資料をご紹介いただきながら、それらの展示方法や活用のあり方について語っていただきました。
三人目の登壇者として、京都造形芸術大学教授で文化財保存修理技術者の大林賢太郎氏に「写真アーカイブスの実務」と題して、「保存」と「保全」の違いや、具体的な写真の保存や修理の考え方、プロセスについてお話しいただきました。
後半は、「アーカイブスの現状と課題」と題し、3名の講演者に再びご登壇いただき、吉川理事の司会進行によるパネルディスカッションを行ないました。会場の皆さんからも、美術館における収蔵品の保存方法や発表のタイミングなどについて具体的な質問が飛び交い、活発な議論が行われました。
最後は、村中修理事より閉会の挨拶があり、終演となりました。関西支部で第一回目となる本シンポジウムは、美術作品としての写真のポジションや保存、活用のあり方を、改めて捉え直す得難い機会になりました。

(文:関西支部 理事 中山 博喜 写真:河田 憲政)

細江 英公 先生「旭日重光章」受章

11月3日付で2017年秋の叙勲受章者が発表され、東京工芸大学名誉教授で本学会元副会長の写真家・細江英公先生(84)が「旭日重光章」を受章しました。細江先生は現在は本学会の評議員でもあります。
「旭日重光章」は「旭日章」のうち「旭日大綬章」に次ぐ勲等の章です。細江先生は2003年に英国王立写真協会特別勲章を受章。2010年には文化功労者に選ばれました。
細江先生のますますのご活躍を心からご祈念申し上げます。


年次大会報告
平成29年度日本写真芸術学会年次大会報告

日本写真芸術学会平成29年度年次総会

平成29年度日本写真芸術学会年次大会が、6月3日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午後1時より通常総会、午後2時より研究発表会、午後6時より懇親会が開催されました。
通常総会は内藤会長が議長をつとめ、内藤議長より上田耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項ではまず田中仁理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事12名、評議員4名、監事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
研究発表は秋元貴美子理事、上田耕一郎理事、佐藤英裕理事を座長にそれぞれ論文口述1件、調査口述1件の計6件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び概要は以下のとおりです。
1.論文口述「写真通信教育の現状と今後」
東京工芸大学芸術学部写真学科 田中 仁
写真教育に関わる通信教育の歴史と現状を紹介されました。さらに写真通信教育は現在、大阪芸術大学と京都造形芸術大学の2校のみが行っているが、その学習方法や特色ある授業形態、受講者の特徴、両校の特色や差異などを詳細に報告され、最後に今後の展望まで発表されました。
2.調査口述「諸外国の写真の教育事情─アメリカ合衆国編─」
日本大学芸術学部写真学科 鈴木 孝史
アメリカ合衆国の州立あるいは私立の総合大学および単科大学22校の写真関連講座(実習、理論)、美術館が併設されているか、寄付金に関わるシステム、写真作品収集、所蔵についてなどの調査報告をとおし、日本との差異を浮き彫りにした発表をされました。
3.論文口述「レフ・マノヴィッチのニューメディア論とその影響─
現代写真文化への応用可能性─」
東京工芸大学大学院芸術学研究科 石橋 賢明
デジタル時代における写真論を考察するには従来どおりにはいかない。それゆえコンピュータが人間文化に与えた影響を語るメディア理論家・アーチストであるマノヴィッチのニューメディア論を考察し、マノヴィッチ理論の要点、及びその理論がメディア論と写真論に与えた影響、重要性について発表されました。
4.調査口述「山縣有朋の笑顔写真発見」
ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
山縣有朋5代目の子孫、山縣由紀子氏所蔵の写真を調査した結果、山縣が晩年に笑顔で写った一枚を発見した報告であった。当時は公の写真では笑顔を見せないのが通例であったなど、笑顔の写真にまつわる歴史的報告も含め、山縣の笑顔写真が撮られた経緯などの調査報告を発表されました。
5.論文口述「戦後における日本ファッション写真の歴史─1946〜56年を中心に─」
日本大学大学院芸術学研究科 細川 俊太郎
発表者が考えるファッション写真の定義を最初に明確にし、それを踏まえ雑誌『装苑』で活躍した写真家たちの作品を中心に1946年〜1959年のファッション写真を欧米の同時代の作品と比較考察し、日本のファッション写真の特徴を述べた。更にそこから見えてくる文化、社会性にまで言及した発表をされました。
6.調査口述「シリーズ展「夜明け前知られざる日本写真開拓史」を終えて」
東京都写真美術館 三井 圭司
本年3月〜5月の東京都写真美術館における「夜明け前知られざる日本写真開拓史総集編」は、平成19年から2年に1回、合計4回の写真展の総括として開催されたものである。これら写真展開催のために行われた調査や新しい展示方法も含め、古写真研究の成果と現状、そして今後の課題について発表されました。
年次大会終了後、会場を東京工芸大学食堂プレイスへ移し、懇親会を行いました。上田耕一郎理事の司会進行により和やかな雰囲気の中で参加者は情報交換などをしながら楽しく有意義な時間を過ごすことができました。
今年度は、残念ながら日本写真芸術学会賞の授与者がおりませんでした。しかし研究発表は、教育に関するものが2件、表現に関するものが1件、歴史に関するものが2件、そして発見の報告が1件と内容に富み、多様な分野での発表が充実していました。また本年度は、昨年の写真プリントセミナーに引き続き写真プリント研究会、関西支部では写真研究会に加え第1回シンポジウムも予定されています。年次大会の研究発表同様、研究会等への参加、学会誌への投稿がさらに増え、学会が活性化し充実したものとなり、次回は多くの賞を授与できることを願っております。

(文:実行委員長・西垣仁美、写真:細川大蔵)

 

関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部 第二回研究会 開催報告
去る平成29年3月4日(土)午後6時より、ビジュアルアーツ専門学校大阪校にて、2016年度に正式発足した日本写真芸術学会関西支部による第二回研究会を開催しました。テーマを「テグフォトビエンナーレ2016報告:芸術監督の経験を通して写真祭を考える」と題し、今回のテグフォトビエンナーレにおいて芸術監督を務められた、本学会理事の吉川直哉先生にご講演いただきました。
当日は、会員と一般聴講合わせて25名ほどのご参加がありました。司会進行は、中山博喜会員(京都造形芸術大学)が務め、講演と質疑応答を含めて約2時間半の会となりました。
前半の講演では、テグフォトビエンナーレの歴史から始まり、実際に芸術監督を任命されるまでの経緯についてお話しいただきました。1980年代に初めて韓国を訪問した時から着実に築き上げてきた縁が今回の任命につながったというお話の中では、芸術監督を引き受けた最も大きな理由に「チャレンジ精神」を挙げられ、国境を越えて積極的に展覧会に参加してきた実体験についてもお話しいただくなど、モノづくりの根幹に触れる場面もありました。
次に、芸術監督という役割について、運営事務局の組織構成を解説していただきながら、キュレーターや出品作家の選出方法、そして予算の割り振りにいたる仕事の詳細についてお話しいただきました。その中で、本ビエンナーレのテーマとなった“We are from somewhere, but where are we going ?/我々はどこから来て、どこへ行くのか?”を決定する際、運営事務局(社団法人 _テグフォトビエンナーレ)から「問いかける形のテーマはこれまでにない」との反発があったと言い、「これまでにないからこそ、やる意味がある」という意志のもとで、事務局と幾度となく意見を交わし合うことによって、ようやく決定に至ったというエピソードをご紹介いただきました。
更に、展示作品を紹介する場面では、それぞれの作品の取り扱い方法やテーマ内容についての数々の興味深い苦労話が披露され、多種多様な意見を短い準備期間の中で和協させるに至ったドキュメンタリーさながらの報告に、会場から感嘆の声が上がりました。
後半は、会員を始めとする会場の皆さんと吉川先生との間で、海外で作品を発表することについての意見交換がなされ、その後の質疑応答でも活発な議論が行われました。
1月に芸術監督の声が掛かってから9月の開催までの含蓄に富むエピソードや各展示作品についての考察など、今回の研究報告は、アジア地域における写真文化の方向性を捉え直す得難い機会になりました。

(文:理事・関西支部・中山博喜)

 

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