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写真プリント研究会報告

写真プリント研究会

昨年度、日本写真芸術学会は、学会創立25周年記念イベントとして、「写真プリントセミナー〜新しいプリント時代の到来のために〜」を開催し、好評を博しました。それを受けて、2017年11月25日(土)午後2時より、東京工芸大学中野キャンパス1203教室において、「写真プリント研究会」を開催しました。講演者は、日本写真芸術学会会長で東京工芸大学名誉教授の内藤明先生にお願いしました。
研究会当日は、会員と一般聴講者を合わせて33名の参加者がありました。司会進行は、当学会副会長の吉田が務め、質疑応答を含めて約100分の研究会となりました。
ご講演は、写真像の特性のうち、最も根源的な要素である階調について、その階調再現は濃度によって形成されること、さらにその濃度を考える時、対数で提示する根拠をウェーバー・フェヒナーの法則に触れながら調子再現についての説明からはじまりました。
次に、近年の黒白印画紙での調査ということで、号数による描写の相違について、7種類の印画紙による現物のプリントサンプルが提示されました。さらに、多階調印画紙において階調がフィルターによって変化する仕組み、ご自身が測定された各社多階調フィルターの分光特性における相違の説明もありました。また、作図された特性曲線での各社号数紙での相違や号数紙と多階調印画紙の違いの説明の他、現像時間、現像温度や現像液の希釈による特性の変化、定着液による特性の相違や、ラピッド・セレニウムトーナーを使用した場合の濃度変化や色調等についても特性曲線や分光特性を用いた説明がありました。最後に、引き伸ばし機の光学的な調整や光源等について触れられ、「プリント雑感」という、やや漠然とした講演タイトルから想像した内容からは、良い意味で裏切られるご講演でした。
ご講演が終了してからは、内藤先生ご自身が制作された黒白印画紙プリントによる作品や、各種のプリントサンプルを身近に閲覧させて頂き、講演者を囲んでフリーに質疑応答が行われました。
最後に、本学会の高橋則英副会長に閉会のご挨拶をして頂きました。今回の研究会は、写真プリントの研究の奥深さを改めて感じることができる良い機会となりました。

(文:研究会担当・副会長 吉田 成 写真:理事 上田 耕一郎)


関西支部・第1回シンポジウム報告


去る平成29年9月2日(土)午後5時より、京都造形芸術大学大阪サテライトキャンパスにて、日本写真芸術学会関西支部による第1回シンポジウム「写真のアーカイブスについて」を開催しました。
当日は、会員と一般聴講者合わせて30名ほどの参加がありました。永坂嘉光理事の挨拶に始まり、3名の講師によるご講演の後、吉川直哉理事による司会進行でパネルディスカッションが行われ、約2時間半の会となりました。
最初に、本学会会員で大阪新美術館建設準備室 研究主幹の菅谷富夫氏にご登壇いただき、「美術館におけるコレクションとアーカイブ」についてお話しいただきました。まずは、建設計画が進んでいる大阪新美術館の概要についての解説に始まり、大阪市が所蔵するコレクションやアーカイブを実際に見ながら、“コレクション”と“アーカイブ”との住み分け方についてお話しいただきました。
続いて、高知県立美術館 石元泰博フォトセンター 学芸員の茂木恵美子氏にご登壇いただき、「石元泰博フォトセンター開設の経緯と活動」と題してお話しいただきました。
高知県立美術館では写真家 石元泰博氏の作品(プリント)を約35000点収蔵しており、そのコレクションはプリントだけにとどまらず、15万枚にのぼるネガや関連書籍、そして、石元氏が愛用していた機材にまで及びます。これらのコレクションを包括的に所蔵するに至った経緯についてご解説いただき、多くの資料をご紹介いただきながら、それらの展示方法や活用のあり方について語っていただきました。
三人目の登壇者として、京都造形芸術大学教授で文化財保存修理技術者の大林賢太郎氏に「写真アーカイブスの実務」と題して、「保存」と「保全」の違いや、具体的な写真の保存や修理の考え方、プロセスについてお話しいただきました。
後半は、「アーカイブスの現状と課題」と題し、3名の講演者に再びご登壇いただき、吉川理事の司会進行によるパネルディスカッションを行ないました。会場の皆さんからも、美術館における収蔵品の保存方法や発表のタイミングなどについて具体的な質問が飛び交い、活発な議論が行われました。
最後は、村中修理事より閉会の挨拶があり、終演となりました。関西支部で第一回目となる本シンポジウムは、美術作品としての写真のポジションや保存、活用のあり方を、改めて捉え直す得難い機会になりました。

(文:関西支部 理事 中山 博喜 写真:河田 憲政)

細江 英公 先生「旭日重光章」受章

11月3日付で2017年秋の叙勲受章者が発表され、東京工芸大学名誉教授で本学会元副会長の写真家・細江英公先生(84)が「旭日重光章」を受章しました。細江先生は現在は本学会の評議員でもあります。
「旭日重光章」は「旭日章」のうち「旭日大綬章」に次ぐ勲等の章です。細江先生は2003年に英国王立写真協会特別勲章を受章。2010年には文化功労者に選ばれました。
細江先生のますますのご活躍を心からご祈念申し上げます。


年次大会報告
平成29年度日本写真芸術学会年次大会報告

日本写真芸術学会平成29年度年次総会

平成29年度日本写真芸術学会年次大会が、6月3日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午後1時より通常総会、午後2時より研究発表会、午後6時より懇親会が開催されました。
通常総会は内藤会長が議長をつとめ、内藤議長より上田耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項ではまず田中仁理事より本年度の役員改選選挙の結果として理事12名、評議員4名、監事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は滞りなく終了しました。
研究発表は秋元貴美子理事、上田耕一郎理事、佐藤英裕理事を座長にそれぞれ論文口述1件、調査口述1件の計6件が行われました。発表の題目、所属、発表者、及び概要は以下のとおりです。
1.論文口述「写真通信教育の現状と今後」
東京工芸大学芸術学部写真学科 田中 仁
写真教育に関わる通信教育の歴史と現状を紹介されました。さらに写真通信教育は現在、大阪芸術大学と京都造形芸術大学の2校のみが行っているが、その学習方法や特色ある授業形態、受講者の特徴、両校の特色や差異などを詳細に報告され、最後に今後の展望まで発表されました。
2.調査口述「諸外国の写真の教育事情─アメリカ合衆国編─」
日本大学芸術学部写真学科 鈴木 孝史
アメリカ合衆国の州立あるいは私立の総合大学および単科大学22校の写真関連講座(実習、理論)、美術館が併設されているか、寄付金に関わるシステム、写真作品収集、所蔵についてなどの調査報告をとおし、日本との差異を浮き彫りにした発表をされました。
3.論文口述「レフ・マノヴィッチのニューメディア論とその影響─
現代写真文化への応用可能性─」
東京工芸大学大学院芸術学研究科 石橋 賢明
デジタル時代における写真論を考察するには従来どおりにはいかない。それゆえコンピュータが人間文化に与えた影響を語るメディア理論家・アーチストであるマノヴィッチのニューメディア論を考察し、マノヴィッチ理論の要点、及びその理論がメディア論と写真論に与えた影響、重要性について発表されました。
4.調査口述「山縣有朋の笑顔写真発見」
ゆうもあくらぶ 石黒 敬章
山縣有朋5代目の子孫、山縣由紀子氏所蔵の写真を調査した結果、山縣が晩年に笑顔で写った一枚を発見した報告であった。当時は公の写真では笑顔を見せないのが通例であったなど、笑顔の写真にまつわる歴史的報告も含め、山縣の笑顔写真が撮られた経緯などの調査報告を発表されました。
5.論文口述「戦後における日本ファッション写真の歴史─1946〜56年を中心に─」
日本大学大学院芸術学研究科 細川 俊太郎
発表者が考えるファッション写真の定義を最初に明確にし、それを踏まえ雑誌『装苑』で活躍した写真家たちの作品を中心に1946年〜1959年のファッション写真を欧米の同時代の作品と比較考察し、日本のファッション写真の特徴を述べた。更にそこから見えてくる文化、社会性にまで言及した発表をされました。
6.調査口述「シリーズ展「夜明け前知られざる日本写真開拓史」を終えて」
東京都写真美術館 三井 圭司
本年3月〜5月の東京都写真美術館における「夜明け前知られざる日本写真開拓史総集編」は、平成19年から2年に1回、合計4回の写真展の総括として開催されたものである。これら写真展開催のために行われた調査や新しい展示方法も含め、古写真研究の成果と現状、そして今後の課題について発表されました。
年次大会終了後、会場を東京工芸大学食堂プレイスへ移し、懇親会を行いました。上田耕一郎理事の司会進行により和やかな雰囲気の中で参加者は情報交換などをしながら楽しく有意義な時間を過ごすことができました。
今年度は、残念ながら日本写真芸術学会賞の授与者がおりませんでした。しかし研究発表は、教育に関するものが2件、表現に関するものが1件、歴史に関するものが2件、そして発見の報告が1件と内容に富み、多様な分野での発表が充実していました。また本年度は、昨年の写真プリントセミナーに引き続き写真プリント研究会、関西支部では写真研究会に加え第1回シンポジウムも予定されています。年次大会の研究発表同様、研究会等への参加、学会誌への投稿がさらに増え、学会が活性化し充実したものとなり、次回は多くの賞を授与できることを願っております。

(文:実行委員長・西垣仁美、写真:細川大蔵)

 

関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部第二回写真研究会報告

日本写真芸術学会関西支部 第二回研究会 開催報告
去る平成29年3月4日(土)午後6時より、ビジュアルアーツ専門学校大阪校にて、2016年度に正式発足した日本写真芸術学会関西支部による第二回研究会を開催しました。テーマを「テグフォトビエンナーレ2016報告:芸術監督の経験を通して写真祭を考える」と題し、今回のテグフォトビエンナーレにおいて芸術監督を務められた、本学会理事の吉川直哉先生にご講演いただきました。
当日は、会員と一般聴講合わせて25名ほどのご参加がありました。司会進行は、中山博喜会員(京都造形芸術大学)が務め、講演と質疑応答を含めて約2時間半の会となりました。
前半の講演では、テグフォトビエンナーレの歴史から始まり、実際に芸術監督を任命されるまでの経緯についてお話しいただきました。1980年代に初めて韓国を訪問した時から着実に築き上げてきた縁が今回の任命につながったというお話の中では、芸術監督を引き受けた最も大きな理由に「チャレンジ精神」を挙げられ、国境を越えて積極的に展覧会に参加してきた実体験についてもお話しいただくなど、モノづくりの根幹に触れる場面もありました。
次に、芸術監督という役割について、運営事務局の組織構成を解説していただきながら、キュレーターや出品作家の選出方法、そして予算の割り振りにいたる仕事の詳細についてお話しいただきました。その中で、本ビエンナーレのテーマとなった“We are from somewhere, but where are we going ?/我々はどこから来て、どこへ行くのか?”を決定する際、運営事務局(社団法人 _テグフォトビエンナーレ)から「問いかける形のテーマはこれまでにない」との反発があったと言い、「これまでにないからこそ、やる意味がある」という意志のもとで、事務局と幾度となく意見を交わし合うことによって、ようやく決定に至ったというエピソードをご紹介いただきました。
更に、展示作品を紹介する場面では、それぞれの作品の取り扱い方法やテーマ内容についての数々の興味深い苦労話が披露され、多種多様な意見を短い準備期間の中で和協させるに至ったドキュメンタリーさながらの報告に、会場から感嘆の声が上がりました。
後半は、会員を始めとする会場の皆さんと吉川先生との間で、海外で作品を発表することについての意見交換がなされ、その後の質疑応答でも活発な議論が行われました。
1月に芸術監督の声が掛かってから9月の開催までの含蓄に富むエピソードや各展示作品についての考察など、今回の研究報告は、アジア地域における写真文化の方向性を捉え直す得難い機会になりました。

(文:理事・関西支部・中山博喜)

 

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