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石井鐵太先生を偲ぶ
本学会監事である日本大学名誉教授・石井鐵太先生が、去る5月17日に急逝されました。享年84歳でした。
先生は6年前から病気療養を続けて来られたわけですが、本学会にはことのほか強い思いを寄せられ、5月21日に予定されていた会計監査にも意欲を見せておられた矢先のことでありました。学会関係者、また大学関係者にとっても大きな驚きであり悲しみでありましたが、5月22日、23日に清瀬市の全龍寺普門閣におきまして葬儀がしめやかに執り行われました。逝去の報は6月初旬に発行された学会誌に、はさみ込む形でお知らせしましたが、ここに生前の石井鐵太先生を偲び、先生のご経歴や業績をあらためて紹介し、追悼の文章とさせて頂きます。
石井先生は、昭和30年に日本大学芸術学部写真学科を卒業後、大学に残られ、助手、専任講師、助教授を経て、昭和55年、日本大学教授に就任しました。その後大学では、写真学科主任、芸術学部次長を歴任し、平成10年に専任教授職を定年退職された後は、日本大学名誉教授として、芸術学部顧問も務められました。 専門は、写真感光材料評価の学問であるセンシトメトリー(感光度測定学)で、とくに1970年代初頭以降、海外製品、国産ともに大きな技術発展を遂げてきたカラーフィルムの画質評価に力を注いで来られました。大学に測定機器を導入するとともに、単なる科学的評価だけでなく、芸術学部写真学科という教育研究の場を背景とし、ユーザーサイドからの主観的な見方も加えた綿密かつ的確な評価は、日本カメラ誌を初めとする多くの雑誌における記事となって発表され、メーカーにとっても大きな影響力をもった研究を続けて来られたのです。
(社)日本写真学会においても、石井先生の研究は写真家の視点にたった科学的感光材料評価としてその意義を認められ、昭和54年には日本写真学会技術賞・東陽会賞を、また平成2年には日本写真学会功績賞も受賞されています。
石井先生は日本写真学会では理事そして副会長も歴任されていますが、この科学技術分野の学会だけでなく、写真の芸術や歴史、そして教育などに関する学会の必要性を早くから呼びかけて来られました。それが日本写真芸術学会の設立につながっていくわけです。
先生は日本写真芸術学会設立委員代表として設立準備に尽力され、平成3年に日本写真芸術学会が渡辺義雄先生を会長として発足してからは、小沢健志先生、細江英公先生とともに副会長として平成16年までの長きにわたり本学会の発展に努力して来られました。
専門の研究としては、とくに本学会設立前から写真画像の保存にも大きな関心を示し、本学会誌創刊の翌年、平成5年度第2巻から「カラー写真画像の安定性を探る」と題した研究論文の発表を始めています。銀塩写真からデジタル写真への移行期でもあり、その研究は従来型銀塩カラー写真の保存性から、インクジェットプリント等のデジタル系プリントの保存性評価へとシフトしていき、研究論文は平成15年度の第11報まで継続しています。
以上のような本学会の設立や発展に対する多大な寄与、また多くの研究と発表の業績から、先生は平成13年に日本写真芸術学会学術賞、平成16年に理事を退かれるとともに日本写真芸術学会名誉賞を受賞されています。また他の学協会としては、(社)日本写真協会理事、(社)日本婚礼写真協会監事、そして(社)日本写真文化協会監事も務められるなど、広く写真文化と業界の発展に寄与されてきた先生でありました。
近年では、平成24年度の本学会誌に「写真技術史」を特別寄稿され、さらに本年6月発行の学会誌にその続編を寄稿されましたが、これが先生の絶筆となってしまいました。このように先生は病気療養をされながらも、写真界の技術的な変化に強い関心をもち続けるとともに、先に記しましたように本学会のことを常に心にかけておられました。
石井鐵太先生のご逝去は学会にとって大変残念なことであり、今後寂しくなることですが、まもなく四十九日を迎えようとする今、先生の業績とお人柄を偲び、ご冥福をお祈りしたいと思います。合掌

(文:高橋則英)

 



学会NEWS No. 66より
第1回写真研究会報告
■関西支部第1回写真研究会の報告
 関西支部第1回写真研究会が10月18日(金)18:00〜20:00に京都造形芸術大学大阪サテライトキャンパスで開催されました。
 昨年度まで15回続いてきた「関西シンポジウム」が今年は休会することもあり、新たな試みとして関西の理事が集結して「写真研究会」を企画しました。
 JR大阪駅前で金曜日の夜という、参加しやすい会場、時間を設定して多くの人に関心を抱いてもらう目的です。
 犬伏理事の司会によりスタートし、内藤会長による学会の主旨、経緯と研究会に寄せる期待が述べられたあと、特別講演、赤木正和氏(水中写真家/ムービーカメラマン 大阪芸術大学写真学科客員講師)による「スーパーハイビジョン(8K)カメラ、静止画への可能性」では最新技術「8Kムービーカメラ」の開発状況と近い将来の展開とそれによる写真静止画への影響と表現への波及が述べられました。続く丸山松彦氏(玉川大学メディア・アーツ学科助手)による研究発表「林ナツミ『本日の浮遊』に関する考察」では「林ナツミ」の浮遊写真をテーマとし、浮遊写真の定義から始まり、歴史的作品からネット上に溢れる浮遊写真までを分析し、社会性にまで言及しました。休憩後の中山博喜氏(京都造形芸術大学専任講師)作品発表「2001−2006年アフガニスタン/パキスタンからの報告」ではNGO現地ワーカーとして6年間、9.11後のアフガニスタン/パキスタンに滞在制作された作品の上映と、紛争地における報道と写真作品発表のデリケートな問題に至る内容でした。最後に田中理事による学会入会への案内と閉会の挨拶で終了しました。20名を越える参加者があり、多くの質問も寄せられ、活気に溢れた内容でした。来年度は関西シンポジウムの再開と写真研究会の定例化も企画されており、今後の活況に期待が寄せられるところです。

(文/写真:田中 仁)

 


学会NEWS No. 65より
平成25年度日本写真芸術学会年次大会報告

平成25年度日本写真芸術学会年次大会が、6月15日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午前11時より通常総会、午後1時から研究発表会、学会賞授与式、その後に懇親会と、予定通り進行しました。また今回は初めてポスター発表が実施されました。研究発表会場隣の展示室において3件(早稲田大学大学院国際情報通信研究科・内藤 旭惠氏、静岡産業大学情報学部・土居 繭子氏、日本大学芸術学部写真学科・穴吹 有希氏)の作品展示と、日本大学芸術学部写真学科の特別展示「歴史的写真の再撮影プロジェクト」が行われ、賑やかな展示会場となりました。
通常総会は、原会長より議長に田村寛理事の指名があり、田村議長より書記に秋元貴美子理事が指名されました。報告事項では、まず佐藤英裕理事より本年度の役員改選選挙の結果として、理事12名、評議委員6名、幹事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は無事に終了しました。第6号議案においては、新会長に内藤明理事が選出され、新副会長に松田義弘理事・高橋則英理事・吉田成理事が内藤新会長より指名されました。
研究発表会は、西垣 仁美理事を座長にして調査報告1件、論文口述発表2件、吉田成理事を座長にして調査報告1件、論文口述発表1件、高橋則英理事を座長にして論文口述発表1件、調査報告1件、計7件の発表がありました。発表の題目・発表者(所属)及び概要は下記の通りです。

  1. 調査報告「台湾写真の現状−「Photo Taipei2012」を中心に−」
    国立臺南大學動畫媒體設計研究所 

    2012年に台湾で開催された「Photo Taipei2012」と題した写真展の作品表現や展示方法に興味と関心を持ったことをきっかけに、写真展を考察し、台湾の写真表現の変化や進行について論考されました。
  2. 論文口述「郎靜山の研究〜郎靜山の集錦写真〜」
    日本大学大学院芸術学研究科 曾 慧玉

    90年以上の歳月を写真芸術に捧げ、20世紀の中国写真界に一定の地位を築いた郎靜山の「集錦写真」の魅力と、郎靜山の日本における写真活動について発表されました。
  3. 論文口述「金丸重嶺研究−金鈴社時代の写真作品による考察−」
    日本大学大学院芸術学研究科 鳥海 早喜

    日本への新興写真の導入に尽力し、その功績から「商業写真の先駆者」として知られている写真家・金丸重嶺の活動を検証し、これまで注目されてこなかった写真作品を紹介しながら金丸重嶺の写真観とその変容について発表されました。
  4. 調査報告「東京都写真美術館において実施した全国初期写真所蔵調査について」 東京都写真美術館 三井 圭司
    東京都写真美術館で平成18年から平成24年に行われた、全国的な初期写真の所蔵調査についての報告がなされました。
  5. 論文口述「明治の三陸大津波の写真」 ゆうもあくらぶ
    明治29年6月15日に発生し、東日本大震災を超える2万人以上の方が亡くなった明治の三陸大津波(海嘯)の写真について発表されました。中島待乳旧蔵の写真台帳に貼られた写真などが紹介されました。
  6. 論文口述「初期上野彦馬の作品と作風」 長崎大学 姫野 順一
    ライデン大学所蔵の「Kokアルバム」における、上野彦馬の初期作品を同時代の下岡蓮杖の作品との比較などから、彦馬の初期作品の編年的な集成を明らかにし、さらに彦馬の風景写真におけるフェリックス・ベアトからの決定的な影響の解明について発表されました。
  7. 調査報告「イギリスとフランスにおける写真黎明期の事物の調査」
    写真史家 横江 文憲

    10数年来、イギリスとフランスにおいて写真黎明期の調査・研究が進んでいる中、イギリスの国立メディア博物館、フランスの国立工芸・技術博物館、フランス写真協会での調査およびブリ=シュル=マルヌ市の事業について報告がなされました。すべての研究発表の後、学会賞授与式がありました。「MICROSCOPE浜野コレクションに見る顕微鏡の歩み」及び写真界への多大な貢献、および長年にわたりミクロの世界についての作品集の発表に対して秋山 実氏に芸術賞、日本の初期写真史の再評価につながる貴重な研究調査を行い、それに基づく資料公開のシリーズ展覧会を実現した三井 圭司氏に学術賞がそれぞれ贈られました。最後に内藤明副会長より閉会の言葉として、年々充実している研究発表について喜ばしく、そして心強く思うこと、今後とも写真表現・写真史・写真教育を三本柱として活動を活性化させていきたいこと、また来年度の年次大会においても新しい見地や考え方、最先端の写真表現の解析など多様な研究に期待することなど、今後の展望が述べられました。年次大会終了後、場所を大学食堂ルネッサンスへ移して懇親会が催されました。池田陽子理事の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。年次大会は、新しい学識に接することのできる貴重な機会であると共に、研究者同士の交流の場として、ますます意義のあるものに発展させていかなくてはなりません。学会誌とは違った形で学会参加への意義を感じて頂ける場として、次回もより多くの皆さまが参加して下さることを心より願っております。

(文:上田 耕一郎、写真:渡邉 智裕)

 



学会NEWS No. 64より
第15回関西シンポジウムの報告

 11月3日(土)文化の日に日本写真芸術学会第15回関西シンポジュウムが京都造形芸術大学で開催されました。今回のテーマは「写真教育の思索」と題して、写真を専攻する学生と学校が減少している現状から、写真教育が岐路に立っているのではないかという考えのもとに、これからの写真教育について考える内容として開催された。
 冒頭、原会長の挨拶の中で、学会の創設のいきさつから現在までの学会活動、関西シンポジュウムの経緯について説明がありました。
 第一部は京都造形芸術大学美術工芸学科現代美術・写真コース教授 小野 規氏による「海外の写真教育事情」?2012アルル国際写真祭の教育シンポジウム報告?で始まった。アルル国立高等写真学校の卒業生でもある小野氏によるフランスの写真教育事情を、体験を交えた内容の発表でした。続く京都造形芸術大学美術工芸学科現代美術・写真コース准教授 竹内 万里子氏は「IT 時代の写真/写真教育」と題し、昨年度に新規開設した、同大学の現代美術・写真コースのカリキュラムや現代美術としての写真教育の取り組みの現状が報告された。
 第二部は招待講演として京都精華大学デザイン学部長佐藤守弘准教授による「路上・蒐集・写真」と題された講演で、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ウジェーヌ・アジェ、桑原甲子雄などの写真を参照しながら、路上/ストリート写真の可能性が検証された。講演項目は次の通りです。

  1. 写真と視覚的無意識 H・カルティエ= ブレッソン :「決定的瞬間」あるいは「すりぬけるイメージ」 W・ベンヤミン:カメラの眼と
    「視覚的無意識」 S・フロイト:精神分析と無意識
  2. 徴候と推論 徴候論 :フロイト/モレッリ/ホームズ(C・ギンズブルグ)セレンディピティと推論的パラダイム 推論(アブダクション)= 仮説形成 徴候と世界のメトニミー(換喩)的関係
  3. 医学・犯罪・シュルレアリスム 医学写真:臨床医学と症候学(J=M・シャルコー/H・W・ダイアモンド)司法写真:アーカイヴ化される犯罪者(A・ベルティヨン)シュルレアリスム:オブジェ・トゥルヴェと写真 痕跡と考古学的想像力
  4. 都市の断片/痕跡の転地 転地(dépaysement)としての写真  桑原甲子雄と1930 年代の東京 考現学と採集 観察者のパラドックス
     第三部は3名の講演者に原会長、司会進行の京都造形芸術大学通信教育部写真コース准教授田中仁が加わり「これからの写真教育」と題したパネルディスカッションが行われた。卒業後の就職を視野に入れた出口教育、多様化している写真教育、高等教育としての写真の意義、など短い時間のなかでパネリストの熱のこもった意見が交わされた。もとより結論を求めたパネルディスカッションではなかったが、これからの写真と写真教育に対する意欲が感じられるものであり、写真教育は必要かつ重要であることは共通の意見であった。質疑応答の中では日本大学芸術学部写真写真学科准教授 秋元理事より高校での写真教育の現状報告もあった。最後に本シンポジウムの企画司会進行をした田中仁氏による閉会の挨拶で終了した。写真教育という専門性の高いテーマではあったが、30 名を越える参加者があり、盛会であった。
    (文:田中仁 写真:河田憲政)

     




学会NEWS No. 63より
平成24年度日本写真芸術学会年次大会の報告

研究発表会は、吉田成理事を座長にして論文口述発表1件、西垣仁美理事を座長にして論文口述発表3件、高橋則英理事を座長にして論文口述発表2件、調査報告1件、計7件の発表がありました。題目・発表者(所属)及び概要は以下の通りです。

  1. 論文口述「表現領域としての夜光写真の可能性」東京工芸大学大学院芸術学研究科 山下 晃伸
    9年間に渡り夜光写真(night light photography)を制作しながら、夜光写真の歴史を踏まえつつ、夜光写真という表現領域の可能性と意味について考察しました。
  2. 論文口述「澤田知子、シャッターを切らない写真家」 日本大学大学院芸術学研究科 バルナス アナト
    20世紀末前後に起きた日本の写真界の現象、「女の子写真」のポピュラー化に興味を持ち、その調査・研究の一環として、写真家「澤田知子」について論考します。
  3. 論文口述「現代写真におけるアプロプリエーションについて」 日本大学藝術学部写真学科 佐藤 英裕
    アプロプリエーションが表現として重要となった背景、および現代写真の分野における代表的な作者について、具体的な作品を挙げてその傾向を概観し、その表現傾向の分類と表現が持つそれぞれの意味の考察を試みます。
  4. 論文口述「金丸重嶺研究−新興写真と戦前の初期写真教育を中心に−」 日本大学大学院芸術学研究科 鳥海 早喜
    金丸重嶺(1900〜1977)は、新興写真時代を牽引した写真家です。また、1939年に創設された日本大学専門部芸術科写真科の初代学科主任を務めるなど写真界への影響は多大でした。同時代の写真学校との比較及び写真科創設時に金丸が制作した授業ノートを紹介しながら、近代的な新興写真に基づく写真教育について、また当時の金丸にとって新興写真とは何であったかについて考察します。
  5. 論文口述「日本のピクトリアリズム成立期における小川一真の位置」日本大学大学院芸術学研究科 打林 俊
    製版術を中心とした写真技術が広く学術に有用な技術であると考えていた小川一真は、一方でP.H.エマーソンの写真表現に深い共感を抱いていました。小川の、この一見相容れない二方向の写真に対する考え方の影響源について考察を行い、その上で小川一真を中心とする写真界と美術行政の関係性が、フランス型アカデミズムの形態を受容したものであったことを指摘します。
  6. 論文口述「近代写真印刷技術の変遷と内親王をめぐる表象の変容」研谷 紀夫 関西大学総合情報学部
    北白川宮成久王妃房子内親王と関係の深い親族や内親王の成長の記録を撮影した写真原版等を詳細に調査し、写真・印刷技術の発展と、写真掲載が可能となったマスメディアの発展などを背景の一つとして捉えながら考察します。
  7. 調査報告「J.N.ニエプスあるいはL.J.M.ダゲールの制作物について」写真史家 横江 文憲
    ニエプスが発明したエリオグラフィー、ニエプスとダゲールが発明したフィゾートタイプ、ダゲールが発明したダゲレオタイプを調査の対象にしました。今回は中間報告として、ニセフォール・ニエプス美術館、イアサント・リゴー美術館、ニセフォール・ニエプスの館の3館の調査報告をします。

今回は、これら7件の正規の研究発表の外に、2012年5月21日の金環日食を湿板写真法で撮影したプロジェクト(安藤義路、日本カメラ博物館、東京工芸大学チームが共同で実施)のガラス写真と説明パネルが研究発表会場内脇に展示されました。
すべての研究発表の後、学会賞授賞式がありました。写真界への多大な貢献および長年に渡り理事として本学会の運営、特に関西シンポジウムなどで示された顕著な功績に対して、今駒清則氏に功績賞が贈られました。また、学術論文「長崎外国人居留地形成にみる歴史資料としての古写真の意義と可能性」に対して中島恭子氏に奨励賞。研究発表「台湾における鳥居龍蔵の調査活動について」および学術論文「鳥居龍蔵の記録した台湾−民族学における初期乾板写真の重要性を中心に−」に対して范如苑氏に奨励賞がそれぞれ贈られました。
最後に内藤明副会長より閉会の言葉として、年々充実している研究発表について喜ばしく、そして心強く思うこと。デジタル技術が発達した今、写真表現について深く考える必要が高まってきていること。そのような中で、写真史、写真表現、写真教育など多様な研究に期待が寄せられていることなど、今後の展望が述べられました。また、本学会の理事でもあり今年度日本写真学会長に就任された小林裕幸氏が紹介されました。今後、両学会が車の両輪となり、切磋琢磨しながら写真文化の発展に寄与していくことが期待されています。
年次大会終了後、場所を大学食堂ルネッサンスへ移して懇親会が催されました。池田陽子理事の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
年次大会は、新しい学識に接することのできる貴重な機会であると共に、研究者同士の交流の場として、ますます意義のあるものに発展させていかなくてはなりません。学会誌とは違った形で学会参加への意義を感じて頂ける場として、次回もより多くの皆さまが参加して下さることを心より願っております。
(文:吉田 成、写真:大島 宗久)




学会NEWS No. 61より
平成23年度日本写真芸術学会年次大会の報告

■平成23年度日本写真芸術学会年次大会報告
 平成23年度日本写真芸術学会年次大会が、6月11日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午前10時より第20回通常総会が始まり、研究発表会、記念講演、学会賞授与式、その後に懇親会と、創立20周年に相応しい充実した1日となりました。
 通常総会はまず原会長の挨拶から始められました。本学会創立の20周年にあたり、創立からの学会の歩みを振り返りつつ、会勢の拡大や法人化など、これから取り組むべき課題について言及があり、また東日本大震災後に再認識された、家族の記録など写真の持つ大きな力や、罹災した写真の保存の問題など、新たに突き付けられた様々なテーマについて、学会として正面から向かい合っていきたいとの考えが示されました。その後、原会長より議長に吉田成理事の指名があり、書記には西垣仁美理事が指名されました。
  報告事項では、まず小林裕幸理事より本年度の役員改選選挙の結果として、理事12名、評議委員6名、幹事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され総会は無事に終了しました。
  研究発表会は、午前中に小林裕幸理事を座長にして2件、昼の休憩を挟んで午後から、高橋則英理事を座長に3件、金子隆一理事を座長にして3件の計8件の論文口述発表、調査報告がありました。発表の題目、発表者、および概要は以下のとおりです。

  1. 「罹災した写真をどう活用していくか」九州保健福祉大学 山内 利秋
     水害よって罹災した写真を救出すること、また地域社会を記録した写真を活用することによって地域を守り、写真そのものを守ることについて提案がなされました。
  2. 「印画からの転写による金膜写真の作製」千葉大学大学院融合科学研究科  久下 謙一・千葉大学工学部  酒井 朋子・写真家  土屋 慶司
     写真印画紙上に作製した金微粒子写真像を転写することで金膜写真を得る方法についての研究が発表され、市販の印画紙を用いて容易に金膜写真を作製できることや、曲面に金膜写真を作製することができるなど、金膜写真の利用範囲が広がる可能性が示されました。
  3. 「TOPCONが標榜した製品技術とアドバタイジングデザイン─1950-70年代アサヒカメラ掲載の記事・広告を通して─」名古屋大学大学院情報科学研究科 荘司 陽太・名古屋工業大学大学院工学研究科  石松 丈佳
     『アサヒカメラ』掲載の記事、広告の分析をとおして、製品技術とアドバタイジングデザインの均衡という観点から、製品の技術面に優先順位を置いたTOPCONという企業の姿勢を考察しました。
  4. 「幕末のパノラマ写真に関する考察 ─内田九一《長崎港》を中心に─」 日本大学大学院芸術学研究科 三井 圭司
      明治期のパノラマ写真についての分析を糸口に、幕末期の写真に先行する視覚メディアである浮世絵との影響関係を、特に内田九一の《長崎港》を中心に検証していきました。
  5. 「幕末・明治期に来日した中欧使節団の古写真コレクションについて」 東京大学史料編纂所 谷 昭佳
      1863年のスイス通商使節団のアンベールコレクションの日本関係資料、および1869年のオーストリア・ハンガリー帝国東アジア遠征隊が持ち帰ったブルガーコレクションの古写真についての現地調査の報告と、複製技術としての写真を歴史資料として用いることについての留意点に関する考察が発表されました。
  6. 「日清戦争以前の小川一眞関係写真帖に関する考察」国立民族学博物館 添野 勉
      小川一眞が日清戦争以前に出版した写真帖に焦点を当て、その特徴と関連した情報を構造化し、この時期における小川の社会的活動と写真帖の存在様態について考察されました。
  7. 「『写真原板』の分析を通した明治期写真館研究の実践とその課題─丸木利陽の写真原板の分析を中心として─」東京大学大学院情報学環 研谷 紀夫
      丸木利陽の写真館における写真原板の詳細な調査をとおして、撮影法、修正、焼き付け、原板の管理などを分析し、写真原板を使用した明治中期以降の写真館研究の可能性について発表しました。
  8. 「台湾における鳥居龍蔵の調査活動について」日本大学大学院芸術学研究科 范 如苑
      鳥居龍蔵は台湾原住民の調査にあたって、研究者自らが写真を撮影することが一般的ではなかった当時にあって、多くの写真を撮影しており、その後の台湾の人類学、民俗学、写真史に大きな足跡を残しています。その調査活動の内容、当時の現地の状況、交通事情などについての研究を発表しました。
  全ての研究発表の後、学会創立20周年記念として、学会創立時の副会長であり、現在は評議委員を務められ、2010年度には文化功労者として選出された写真家 細江英公氏による「球体写真二元論」が講演されました。「球体写真二元論」は、細江氏の写真表現の根幹をなす思想と言え、写真における主観性と客観性、記録性と表現性を球体の両極に喩え、その間に広がる無限の写真表現の可能性を示唆する理論であり、その実践としての作品を紹介しながら講演されました。
  引き続いて学会賞授与式があり、我が国の光化学・電気化学研究の分野で多大なる功績があり、本学会でも長年役員として尽力された故・本多健一氏に名誉賞、長年にわたって学会の理事を務め功績のあった石川寛夫氏ならびに故・原正人氏に功績賞、昨年度の年次大会などで優れた研究発表を行った鳥海早喜氏に奨励賞が贈られました。当日出席された鳥海氏が受賞の挨拶を行い、研究にあたって協力いただいた関係者への謝意と今後の決意が表されました。
  最後に内藤明副会長より閉会の言葉として、年々充実している研究発表について喜ばしく、そして心強く思うこと、またさらに写真教育や表現など多様なアプローチの研究の発表に期待すること、研究発表会へより多く方々に来場してもらいたいことなど今後の展望が述べられました。
  その後、大学食堂ルネッサンスへ場所を移し懇親会が催されました。池田陽子理事の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
  年次大会は、新しい学識に出会うことのできる貴重な機会であると共に、研究者同士の交流の場として、ますます意義のあるものに発展させていかなくてはなりません。次回もより多くの皆さまが参加して下さることを心より願っております。

以上、平成23年度年次大会についてご報告申し上げます。(文:吉野弘章、写真:孟 憶南)
 



学会NEWS No. 60より
第13回関西シンポジウムの報告

■第13回関西シンポジウムの報告
 2010年10月2日(土)1:30〜17:00に兵庫県立美術館1階レクチャールームにおいて、第13回関西シンポジウムが「横断する多面体〜新興写真の時代〜」というタイトルで行われました。
  最初にシンポジウムを企画された今駒理事より開会の挨拶がありました。1〜3回のシンポジウムが新興写真をとりあげた思い出と今回再度、同テーマを取り上げる喜びを話されました。
  続いて原 直久会長より挨拶があり、若い方々への学会への入会を呼びかけられました。 シンポジウムは1部が大阪芸術大学教授・犬伏雅一氏による講演「横断する多面体」でした。内容は「中山岩太の写真言説」についてであり、次の内容でした。  
 0.横断する多面体  
 1.中山の帰属・通過した言説空間  
 2.中山が紡ぎ出した言説  
 3.中山の言説の多面性と亀裂  
 4.中山の言説と写真行為から垣間見えるもの
  休憩をはさみ第2部は「関西写真の戦前を考える」というテーマで犬伏雅一氏、兵庫県立美術館の河ア晃一氏、甲子園短期大学准教授の松實輝彦氏によるディスカッションでした。
  松實氏は新興写真の一面を広告写真に焦点を当てられました。河ア氏はキューレターの立場から写真を広めるための展覧会や資料集めの重要さについて語されました。犬伏氏は写真による地域のイメージの形成について語られました。その後、それぞれのテーマについてのディスカッションと最後に質疑応答があり終了しました。
  シンポジウムの締めとして出席理事の紹介と高橋則英理事により挨拶がありました。
(文:西垣仁美、写真:武吉 悠)

■細江英公前副会長が2010年度文化功労者に
 2010年度の文化功労者として本学会の前副会長細江英公氏が選ばれました。文化功労者は、文化の向上発達に関し特に功績顕著な人を顕彰するため、昭和26年に制定された国の顕彰ですが、1990年以降、写真の分野からは、1990年に本学会初代会長の渡辺義雄氏、1996年に石元泰博氏、2003年に本学会評議員の田沼武能氏が選ばれております。
  今回の文化功労者の顕彰は写真芸術や写真文化に対する長年にわたる細江氏のご功績に対してのものではありますが、本学会としても大変名誉なことであります。氏は、本学会の設立に多大なご尽力をされ、設立の平成3年3月30日から副会長を勤められました。その後平成17年から現在まで評議員をされております。こうした副会長、評議員としてのご功績の他、写真教育の委員会や学会誌創作編の審査においてもおほねおり頂いており、本学会にも多大なご功績をあげられております。
(文・内藤明)

 



学会NEWS No. 59より
年次大会報告・研究発表会・学会賞授与式・懇親会

■年次大会報告
 平成22年度日本写真芸術学会年次大会が6月12日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。午前10時からの第19回通常総会に始まり、研究発表会、学会賞授与式そして夕刻からの懇親会と、66名の会員を迎え充実した一日となりました。
 通常総会は原直久会長の挨拶で開始されました。会員数の漸減や学会誌への広告掲載協力が得られないことによる発行コストの増加など学会運営は困難な状況が続いていますが、来年度の発足20周年に向けてホームページの整備などにより新たな会員を迎え会勢の拡大を図りたいとの挨拶がありました。その後議長には佐藤英裕理事が、書記には吉野弘章理事が選出されました。
 報告事項では西垣仁美役員選考委員長より本年度改選の理事・監事・評議員の選挙結果として、新たに参加する田中仁理事(京都造形芸術大学)を含め全員の選出が認められたこと、また逝去された江田研一監事に代わって任期1年の監事に柏ア育造氏が就任したことが報告されました。
 審議事項では議案すべてが承認されましたが、第6号議案の会則改正により、従来は入会に際して正会員の推薦が必要であったところを改め、既定の入会届の提出により理事会の承認が得られれば会員となることができるようになりました。これにより地方在住の方などの入会が増えることが期待されます。

■研究発表会
 研究発表会は吉田成理事を座長として2件、佐藤英裕理事で3件、高橋則英理事で2件、西垣仁美理事で2件の計9件の調査報告、論文口述発表がありました。題目・発表者(所属)および概要は以下の通りです。
1「マニラ ダゲレオタイププロジェクト」写真保存修復家 三木麻里
 ジョージ・イーストマン・ハウス国際写真博物館とロチェスター工科大学画像保存研究所が共催する写真の保存修復を学ぶ2年間のプログラムの中で取り組んだ、1840年代から50年代のフィリピンを記録したダゲレオタイプの修理過程を報告しました。
2「写真保存用包材の使用方法と安全性について」
日本大学大学院芸術学研究科 竹内涼子 高橋則英
 ISOで規定された写真保存用包材の安全性を確認するPhotographic Activity Testにより、現在多用される合い紙、台紙、接着剤、テープ等の安全性と問題点を報告しました。
3「『写真100年−日本人による写真表現の歴史展』の開催意義に関する研究」日本大学大学院芸術学研究科 鳥海早喜
 1968年6月開催の同展覧会について、編纂委員が写真の発掘・収集・保存の必要性を訴え、その後の東京都写真美術館や写真保存センターの活動に結び付いたことなどの開催意義を編纂委員の松本徳彦氏への取材を含めて報告しました。
4「写真表現におけるシークエンス(Sequence)についての考察」
東京工芸大学芸術学部写真学科 吉野弘章

 写真表現におけるシークエンスを、映画のモンタージュや組写真との連関を交えて解説し、機械的シークエンス、言語的シークエンス、視覚的シークエンスに分類して、語学において文法を解析する手法に似た試論として写真編集工学を提唱しました。
5「延辺文化大革命−10年の約束」
中国延辺大学美術大学写真科 柳 銀珪

 中国の少数民族地域である延辺朝鮮族自治州の文化大革命時の様子を記録した6000余枚の写真を託され、撮影した写真家・黄永麟氏との約束により時を経て発表した写真により文革の断面と歴史を記録した写真家の存在を紹介しました。
6「現代に於けるブロムオイルプリントの再現」
日本大学大学院芸術学研究科 志賀裕一

 ブロムオイルプリントを制作するにあたり必要な、保護層や硬膜剤を含まずゼラチンレリーフを作ることのできる印画紙が入手不可能となった現状に対し、理想的なブロマイド紙の自製を試みた結果を報告しました。
7「初期紙焼写真の系譜」東京大学史料編纂所 谷 昭佳
 紙焼写真の前段としての薩摩藩のダゲレオタイプから、肖像を残すという写真の文化的側面にも言及し、島津斉彬を中心に松木弘安らによって行われていた紙焼写真の研究内容と、制作された日本の初期紙焼写真が塩化銀紙であったことを報告しました。
8「丸木利陽と利陽会に関する基礎的研究」
東京大学大学院情報学環 研谷紀夫

 明治・大正期に活躍した写真師の丸木利陽について、御真影撮影を行ったことによる影響や、当時の写真館の徒弟制度と弟子たちの同窓会である丸木会についての研究を中間報告として発表しました。
9「幕末明治期写真の再撮影による機材の分析A」
日本大学芸術学部写真学科 田中里実 原直久 高橋則英
日本大学大学院芸術学研究科 中島実英

 写真師フェリーチ・ベアトが下関戦争に従軍した際の写真について、前田砲台跡における大型カメラによる再撮影の結果を中心に、ベアトの撮影行動とその撮影地点の検証結を発表しました。閉会挨拶では内藤明副会長より、多くの発表があり内容としても歴史だけでなく表現や記録としての写真を含んだバラエティに富んだものとなったとの話がされて研究発表会を終了しました。

■学会賞授与式
 引き続いて行われた学会賞授賞式では、監事として本学会の運営に貢献頂きました故江田研一氏(ご長女・岡里いづみ氏が代理で出席)と、長年にわたり理事を務め関西シンポジウム等でも貢献された鈴鹿芳康氏のお二人に功績賞が贈られました。

■懇親会
 懇親会は会場を移し学生食堂ルネッサンスで開催され、久保走一前会長の乾杯では、会員数は減っているものの会員の質は以前よりも充実しているのではないかとの挨拶がなされ、例年通り池田陽子理事の司会進行により和やかな会合を持つことができました。年次大会は研究発表者と直接対話することができ、他の参加者の学識にも接することができる機会といえましょう。学会誌とは違った形で学会参加の意義を感じて頂ける場とて次回も多くの会員の皆様の参加をお待ちしております。
(文:原正人、写真:伊藤哲史)