2019年度 New&Report まとめ

総会報告

新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、文書総会として行われた令和2年度第29回通常総会は7月31日の返信ハガキ締め切り結果、
以下の全てにおいて了承されましたことをご報告致します。日本写真芸術学会 第29回通常総会(議案送付による文書総会書面表決書)
◎報告事項

 1.理事・監事・評議員改選選挙結果報告
◎議事
 第1号議案 会務会勢報告
 第2号議案 令和元年度事業報告
 第3号議案 令和元年度会計・会計監査報告
 第4号議案 令和2年度事業計画
 第5号議案 令和2年度予算案
 第6号議案 会長・副会長選出の件 

関西支部 第3回シンポジウム 報告書

テーマ:写真のアーカイブズについて 3
日時:2020年2月15日(土) 午後3時~午後6時
於:ビジュアルアーツ専門学校VD-1 校舎 アーツホール
パネリスト:新潟大学人文社会学系人文学部教授 地域映像アーカイブセンター 原田 健一 氏
      大津市歴史博物館 学芸員 木津 勝 氏
司 会:金澤 徹 理事
出席者:20名 関西支部では、第 1 回のシンポジウムから写真のアーカイブズについて議論を深めてきました。第 3 回のシンポジウムにおいてもこれまでの内容に続き、パネリストとして新潟大学地域映像アーカイブセンターの原田健一先生、そして大津市歴史博物館学芸員の木津勝氏にご登壇いただいて、地方におけるアーカイブの取り組みについてご紹介いただきました。
 最初に、関西支部代表の村中理事より、関西支部におけるこれまでの研究会、シンポジウムの歩みについて説明があり、日本写真芸術学会の高橋会長による挨拶の後、「大津市歴史博物館の写真アーカイブ」というテーマで、木津氏にお話しいただきました。
 当初は写真を主たるコレクションとして取り扱っていなかった大津市歴史博物館ですが、開館から今年で30年という過程において、大津市の歴史を語る多くの写真資料が集まり、1998年ごろから写真のデジタルアーカイブ化を図ったことが紹介され、それらの資料が集まった経緯や方法、そして保存や活用方法について説明いただきました。先に述べたように、もともと写真を専門的に取り扱う予定がなかったこともあり、写真の保存、管理に関してはその年代によって手探り状態で行われており、膨大なフィルムや写真を取り扱うことの難しさを改めて認識した時間となりました。これらの資料は博物館のホームページを通して公開されており、5年毎に検索方法などの構成を見直し、時代に準じた技術やルールを取り入れて更新しているとのことでした。 
 続いて、原田先生には、主にデジタルデータ化された映像の活用方法についてお話しいただき、地域の歴史を物語る映像資料の重要さを説くためのポイントとして、圧倒的なアーカイブデータを公開し、それらの内容を読み解く行為は鑑賞者に委ねることを上げておられました。アーカイブの対象となる写真や映像が保存されている地域や条件についても触れられており、現在の地図で資料の発掘先を推測することの危険性について、実際の写真資料などと共にお話しいただきました。2000年代に入り、デジタル技術や通信環境が大きな進歩を遂げ、肖像権や著作権といった権利に対する社会の認識も多様化しつつある今、鑑賞者の権利なども含め、これからのアーカイブがどうあるべきなのかを考えさせられる時間でした。
 後半は、本学会理事の金澤先生にもパネリストとして加わっていただき、映像資料をいかにして社会に還元すべきなのか、どのように共有できるのかという話を中心に、パネルディスカッションが繰り広げられました。また、質疑応答では “ データベース ” と “ アーカイブ ” の違いについて意見が交わされ、資料のデジタル化に伴う言語の変容についても意見が飛び交いました。最後に、デジタルデータの保存方法に話が及び、各パネリストからはそれぞれの具体的な活動が紹介されました。
 今回のシンポジウムは、“ 写真 ” というメディアの持つ記録性が、それぞれの地域の歴史を語るための資料として重要な役割を果たしていることを再認識すると共に、保存技術や権利の問題、そしてデジタル化や通信技術の進歩など、時代に準じたアーカイブのあり方について考える、貴重な機会となりました。(文責:中山博喜)

関西支部シンポジウム
関西支部シンポジウム会場風景

ニュース

田沼武能評議員 令和元年度「文化勲章」受章 

田辺先生

 日本写真芸術学会の評議員であり、学会創設時より多大なるご尽力をいただいている写真家の田沼武能先生が、令和元年11月3日付で文化勲章を受章されました。
 田沼先生は昭和4年に東京浅草に生まれ、昭和24年に東京写真工業専門学校(現、東京工芸大学)を卒業後、サン・ニュース・フォトスに入社して木村伊兵衛の助手となり、写真家としての人生をスタートされました。昭和26年より『藝術新潮』の嘱託写真家として文化人の肖像写真による連載で注目を集め、昭和40年にはアメリカのタイム・ライフ社と契約し、フォトジャーナリズムの分野で世界的に活躍されています。また、昭和59年から黒柳徹子ユニセフ(国連児童基金)親善大使の援助国訪問に全て同行するなど、これまでの取材活動は世界120カ国以上に及んでいます。
 田沼先生は90歳を超えた今日までの70年余、常に第一線の写真家として優れた作品を発表し続けながら、平成6年には東京工芸大学教授に就任し、教育の現場において後進の育成に尽力(現在は名誉教授)。さらに平成7年から日本写真家協会の会長に就任し、同協会の社団法人化に奔走し、平成13年に社団法人として認可を得るなど、平成27年の退任まで20年の長きにわたって同協会を牽引されました。
 また現在でも、日本写真著作権協会会長、日本写真保存センター代表を務めるなど、永年にわたり写真界の要職に就き、我が国の写真界の発展に力を尽くされてきた功績が今回の受章につながりました。
 田沼先生の文化勲章受章は写真分野からの初めての栄誉となり、写真文化の向上と普及に寄与することを目的に設立された本学会としても大変喜ばしいニュースです。
 田沼先生の今後ますますのご活躍をお祈りいたします。(文:吉野弘章)※ 田沼先生の文化勲章受章を記念して写真展が開催されます。
田沼武能 文化勲章受章記念写真展「日本の子ども 世界の子ども」
日 時 :令和2年4月10日(金)~ 5月17日(日)会期中無休 10:00~ 20:00
会 場 :東京工芸大学 中野キャンパス6号館 ギャラリー 6B01 

写真史研究会報告

第1回写真史研究会報告

「日本における経歴―ライムント・フォン・シュティルフリートと初期横浜写真」
ゲスト:ルーク・ガートラン (セント・アンドリュース大学准教授)
日 時:令和元年8月3日(土) 15:00 ~ 17:30
会 場:東京都写真美術館 学習室

研究会会場

 日本写真芸術学会が、推し進めるべき学問的研究分野の3本の柱として掲げている写真の表現、歴史、教育に関する会員の研究成果は、これまで年次大会の研究発表会や学会誌において発表されてきました。学会ではさらにそれぞれの分野における研究の活性化と深化を目指して研究会活動を進めて行きたいと考えています。このような主旨により、この度、歴史分野において写真史研究会を開催する運びとなりました。
 第1回の写真史研究会は、明治初期の日本で活躍した写真家シュティルフリート研究の第一人者であるルーク・ガートラン博士をお招きして、令和元年8月3日(土)午後3時より東京都写真美術館の学習室をお借りして開催しました。
 今回の研究会は、現在スコットランドのセント・アンドリュース大学美術史学科(スクール・オブ・アートヒストリー)で准教授をされているガートラン先生がサバーティカル休暇による研究のため日本に滞在されているというタイミングをとらえて講演をお願いしたものです。また本年度から理事会メンバーとなった藤村里美理事(東京都写真美術館)、また写真美術館で長く写真の歴史展に取り組み学会でも発表頂いている三井圭司会員にも尽力頂いて、東京都写真美術館に共催というかたちでご協力頂き、会場をお借りしたものです。
 講演は、シュティルフリート研究の集大成として2016年に刊行された著作『A Career of Japan: Baron Raimund von Stillfried and Early Yokohama Photography(日本における経歴―ライムント・フォン・シュティルフリートと初期横浜写真)』の内容を中心としてお話し頂きました。シュティルフリートは、1872(明治5)年の横須賀造船所における明治天皇盗撮のエピソードや、横浜写真の制作でその名は比較的よく知られているものの、経歴の詳細はこれまであまり深く研究されることはありませんでした。この研究会は、明治初期の日本において重要な役割を果たしたシュティルフリートの広く知られることのなかった業績を解説し、我が国の初期写真史の再考察を目指したもので、シュティルフリートとその周辺のスタジオや写真家の事歴が併記された年表も配布され、参加者は熱心にガートラン先生の講演に聞きいっていました。
 会場の関係で定員は少なめでしたが、会員外の大学や美術館の研究者も交えた25名の参加者があり、研究会に続いての懇親会でも活発な意見交換も行われ、たいへんに興味深く有意義な写真史研究会になったと思います。今後も継続して写真研究会を開催したいと考えます。今後ともご関心のある多くの会員の方にご参加頂きたく、お願い申し上げます。(文:高橋則英 / 写真:田中里実)

会長挨拶、ディスカッション、閉会挨拶

関西支部研究会報告

関西支部 第6回研究会報告

第6回研究会テーマ
1970 年代以降の関西の写真の動向を考え、アーカイブスの方法論を探る
「京都を中心とした写真活動について」
日 時:令和元年9月7日(土)17:00 ~ 19:00
会 場:ビジュアルアーツ専門学校 VD-1 校舎7階 7B教室
司 会:村中 修 理事 / 関西支部代表
ゲスト:写真編集者 中川繁夫 氏
聞き手:金澤 徹 理事
出席者:20名

 関西支部では写真のアーカイブスをテーマにシンポジウム、研究会を重ねてきましたが、今回は1970年代に関西で写真図書館、写真表現大学、ギャラリーなどの設立運営に携わってきた中川繁夫さんをお迎えして研究会を行いました。関西支部代表、村中理事の司会で始まり、高橋会長の挨拶の後、ご本人の写真家としての活動のスタートから、当時の時代背景を絡めて東京、関西、特に京都での写真活動に、どのように関わられてきたかを自分史という形で詳細に語っていただきました。
 当初は東京にて小説家を志すが果たせずに京都に戻り写真と出会う。既存の美術団体や写真団体に属し、入賞もするがそのことに飽きたらずにカメラ毎日などの写真雑誌、北井一夫作品 「村へ」 などから影響を受け、釜ヶ崎をテーマに撮影を始める。撮りためた作品を用いて 1979年に釜ヶ崎で青空写真展を開催。また自ら編集長となって雑誌「季刊釜ヶ崎」、並行して写真評論誌「映像情報」を発刊。写真家としてのキャリアの当初から、中川氏にとって、常に写真と言葉が一体であったことを強く感じました。
 大きな転機となったのは 1982 年に大阪で開催された「東松照明の世界展」実行委員会に参加されたことでした。この実行委員会で多くの関西の若手写真家、ギャラリストと出会い、そして何よりも東松照明氏と出会われたことがその後の展開に大きな影響を与えました。1974 年に東京で始まる「ワークショップ写真学校」、沖縄の宮古大学のように、京都で写真を学ぶワークショップを立ち上げる現地ブレーンとして当時作品制作のために京都に滞在されていた東松氏と何度も話されたとのことでした。
 東松氏のワークショップは結果的に実現しませんでしたが、中川氏ご自身が立ち上げられた「フォトハウス構想」の一環として、有志による泊まりがけのゾーンシステムのワークショップ、京都フォトシンポジウムなどに繋がっていきます。このワークショップには当時まだ助手として大学に在籍されていた高橋会長も講師として招かれたとのこと。さらにこの流れが写真図書館を立ち上げることや、その後の写真表現大学の運営に関わっていくことなどに繋がります。
 冊子発行やワークショップの開催、写真図書館やギャラリー運営、写真展の開催など、関わられてきた様々な活動について、当時の印刷物やチラシなど、豊富な資料をお持ちいただき、休憩時間には自由に手にとって見ることができました。休憩後は中川繁夫氏と親交の深い本学会金澤理事が聞き手となって、前段でお話しいただいたいくつかの事柄についてさらに掘り下げてお話を聞くことができ、最後に来場者からの質疑応答で締めくくりました。出席された田中仁副会長も言われていましたが、中川氏の個人史ではありますが、さながら関西における現代写真史を聞かせていただいたような、実に充実した研究会となりました。(文:村中 修)

関西支部 第6回研究会

写真プリント研究会報告

第3回写真プリント研究会報告

「ピエゾグラフィー~デジタルモノクロプリントの可能性」
ゲスト:松平光弘(アトリエマツダイラ・東京工芸大学講師)
日 時:令和元年 12月7日(土)14:00 ~ 16:00
会 場:東京工芸大学 中野キャンパス 1号館2階 講義室 1203

 本学会では、写真表現において、最も基本的かつ写真作品の根源ともいうべき “ プリント ”を大切にしていきたいと考えています。現在、写真は身近なコミュニケーションのツールであり、アートの重要な表現手段の一つとなっています。また、デジタル技術の急速な発達に伴い、発表の場や方法も多様化し、写真表現そのものも変化してきました。このような時代の流れの中で、写真表現とプリントの今後について会員の皆様と共に考えるため、平成 28 年度に「写真プリントセミナー」を開催して好評を博しました。本学会では、その後 2 回の写真プリント研究会を開催し、今回は第 3 回目にあたります。第 3 回写真プリント研究会は、講師としてアトリエマツダイラ代表で東京工芸大学講師の松平光弘先生をお迎えして、令和元年12月7日(土)の 14:00 より 16:00まで東京工芸大学中野キャンパス1号館2階の講義室 1203 において開催しました。当日は50名のご参加を頂きました。 
 今回、松平先生には「ピエゾグラフィー~デジタルモノクロプリントの可能性」という演題でお話し頂きました。ピエゾグラフィーは、アメリカで開発されたモノクロ専用7 段階のグレーインクをエプソンのインクジェットプリンタに搭載し、特別なプリンタドライバで出力する高品質のデジタルプリントのことをいいます。ご講演では、ピエゾグラフィーの優位性や制作方法などについて、わかりやすくご説明頂いただけではなく、プラチナプリントなど古典印画技法のネガ作成への応用の可能性にも触れて頂きました。ソフトな語り口によるご講演の後、実物のプリントを目の前にしながら、ご参加頂いた皆さまからの質問に気軽に答えて頂きました。写真制作の新しい可能性を感じさせる有意義な研究会になったのではないかと思います。日本写真芸術学会では、これからもさまざまな研究会を開催して会員の皆様の制作・研究活動のお役に立ちたいと考えておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

第3回写真プリント研究会

年次大会報告

令和元年度日本写真芸術学会年次大会報告

令和元年度日本写真芸術学会年次大会が、6月8日(土)に東京工芸大学芸術情報館で開催されました。10時より通常総会、11時から研究発表会、18時から学会賞授与式、18時30分から懇親会が開催されました。
 先ず冒頭での実行委員長の開会の辞に続き、高橋会長が挨拶を行い、会勢や財政の現状を鑑み、学会としての活動活性化とその質の向上の必要性、新たな研究会の発足や学会誌のリニューアル、経費の削減による財政状況改善への取り組みなどを述べました。
 続いて通常総会では、高橋会長が議長をつとめ、高橋議長より上田耕一郎理事が書記に指名されました。報告事項では、まず佐藤英裕理事より本年度の役員改選選挙の結果として、理事12名、評議員4名、幹事1名が選出されたことが報告されました。その後は議事へと移り、議案は全て承認され、総会は無事に終了しました。
 研究発表会は、上田耕一郎理事を座長にして調査口述2件、田中仁理事を座長にして調査口述2件、佐藤英裕理事を座長にして論文口述2件、吉田成理事を座長にして論文口述3件、西垣仁美理事を座長にして論文口述2件の計11件の発表がありました。発表の題目・発表者(所属)及び概要は下記の通りです。
発表1(調査口述)「戦前のニュース写真発見」石黒敬章(ゆうもあくらぶ)
存外少ない戦前のニュース写真を、最近収集した中から、こんなニュースがあったのかと思われる明るいニュースを選んで紹介がなされました。
発表2(調査口述)「明治三陸津波をいち早く撮った末崎仁平」沼田清(共同通信社)
 1896年6月の明治三陸津波の際に、岩手県鍬ヶ崎町(現宮古市鍬ヶ崎)の惨状をいち早く記録した地元の写真師・末崎仁平について、作品とその発掘の経緯を紹介するとともに、最近判明した出自や、宮内庁への写真献納経過が報告がなされました。
発表3(調査口述)「風景写真競技会の評価観点についての考察」水島章広(産業能率大学)
 トーナメント競技の要素を入れた風景写真評価の楽しみ方を実践する中で課題であった、ジャッジ育成のために必要な作品評価の基準づくりについての調査と考察について発表がなされました。
発表4(調査口述)「アクティブラーニングによる初心者向け写真撮影の授業の実践について」丸山松彦(玉川大学)
 教育機関における限られた時間のなかで、写真の撮影技術を取り扱う際の効果的な学習方法と授業運営について、アクティブ・ラーニングによる授業の実践について解説がなされました。
発表5(論文口述)「〈インスタグラミズム〉の写真芸術学的考察」石橋賢明(東京工芸大学大学院)
 既存の写真論とは異なるマノヴィッチ独自のアプローチによって明らかにされた美学である〈インスタグラミズム〉の概念について、その著書『インスタグラムと現代写真文化』での論述を中心に、写真芸術学的見地からの検討が報告がなされました。
発表6(論文口述)「2次元フーリエ変換による写真の客観的評価に関する研究」伊藤雅浩,福川芳郎(ブリッツ・インターナショナル)
 「良い写真」「悪い写真」という感覚的で曖昧な表現で語られることが多い写真の評価について、2次元フーリエ変換による数値的な客観評価方法の確立を目的とした研究が報告がなされました。
発表7(論文口述)「沖縄の〈写真館文化〉の特色について」李京彦(大阪芸術大学大学院)
 日本本土の営業写真館が創り出した〈写真館文化〉とは異なる特色を持つ沖縄の営業写真館の歴史と、時代・地域社会の特性などから現れる特色と変遷について報告がなされました。
発表8(論文口述)「ピーター・ヘンリー・エマーソンと自然主義写真のゆくえ ─日本における 受容と展開に関する考察」打林俊(日本大学)
 我が国のピクトリアリズムの成立を考える上で重要なピーター・ヘンリー・エマーソンの写真史における位置づけと、日本写真史における受容を中心に考察が報告がなされました。
発表9(論文口述)「島津斉彬が取り組んだダゲレオタイプとカロタイプ─異なる写真技術に取り組んだ背景に対する―考察―」安藤千穂子(京都工芸繊維大学)
 被写体との関係性を軸に、ダゲレオタイプとカロタイプという二つの写真技術に島津斉彬が取り組んだ背景について報告がなされました。
発表10(論文口述)「文化財としての写真原板の活用」三井圭司(東京都写真美術館),三木麻里(日本大学)
 写真師・堀内信重が撮影したコロディオン湿板方式原板から印画した鶏卵紙とデジタル・データとの差違について考察された結果が報告がなされました。
発表11(論文口述)「植田正治カラー作品研究─原板の保存とデジタルアーカイブ─」田中仁(東京工芸大学)
 日本を代表する写真家の一人といえる植田正治の生家に残されている未整理のカラー作品の保存とデジタルアーカイブを行った結果が報告がなされました。
 学会賞授与式では、本年度は名誉賞に原直久氏、芸術賞に原直久氏、功績賞に永坂嘉光氏が受賞されました。授賞理由は以下の通りです。
 原直久氏は本学会発足に際し設立委員として参加、初年度より理事として永く学会の発展に寄与してこられました。とくに平成14年度から15年度は副会長として、さらに平成16年度から26年度まで10年の長きにわたり会長をつとめられ、この間3回にわたる九州シンポジウムの開催等をはじめとして学会の活性化と発展に尽力されました。また会長退任後も理事として学会の運営に携わるとともに写真プリント研究会での講演等継続して学会の活性化に寄与されました。以上のような本学会発展に対する顕著かつ多大な貢献に対して名誉賞を授与致しました。
 また、原直久氏は1973年以来、8×10インチ大判カメラを用いて作品制作を継続し、国内外で作品を発表する作家活動は40年以上にわたります。平成30年にはその集大成といえる全貌が見える写真展「原直久 時の遺産」展が日本大学芸術学部芸術資料館で、および千葉の海岸、九十九里浜等の初期作品展がフォト・ギャラリー・インターナショナルにおいて開催されました。さらに、東京都写真美術館の企画展にも「イタリア山岳丘上都市」のシリーズ作品が選出されています。以上のような写真展と長年にわたる作品活動に対して芸術賞を授与いたしました。
 永坂嘉光氏は長年にわたり、理事として関西を中心に学会活動の牽引に勤めてこられました。とくに多くの関西シンポジウムの企画、運営に顕著な業績を残し、本学会発展に寄与にしたことに対して功績賞を授与いたしました。
 年次大会の最後には吉田成副会長が閉会の挨拶を行い、その後場所を東京工芸大学食堂プレイスへ移して懇親会が催されました。上田耕一郎理事の司会進行により、和やかな雰囲気の中で参加者は楽しい時間を過ごすことができました。
 今年度の学会活動としては、昨年度に引き続き写真プリント研究会の開催と関西支部の写真研究会とシンポジウムが予定されております。また、夏期に写真史研究会をはじめて開催いたします。ぜひ積極的なご参加をお待ち申しあげます。また、本年度は学会誌論文編を2巻発行の予定です。論文投稿が活性化し充実したものとなりますようお願いいたします。そして次年度の年次大会もより多くの皆さまにご参加いただけますことを願っております。(報告:秋元貴美子理事、写真:高田有輝)

総会の様子
研究発表会
学会賞授与式
懇親会
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